美味しい記憶

雪景色

恵方巻きを買うお店は、数年前からずっと同じ。

それまでは毎年お店を変えては違いを楽しんだのに、
今のお店と出会ってからは周りなんてどうでもよくなり、
一年に一度の楽しみとして定番化しています。

単に美味しいから、じゃなくて、
美味しい中にも『心に染み入るような美味しさ』があるから。
ふっと肩の力が抜けて、冗談抜きで、
気を緩めるとうっかり泣いてしまいそうな、そんな感覚すら覚えます。

ぐいぐいと主張する味じゃなく、スッと体内に溶け込む優しい味。
最後には美味しい記憶だけが鮮明に残ります。

そのお店のご主人、おそらく職人歴が半世紀は超えるご年配の方。
巻き寿司ひとつにご主人の人生がそのまま投影されているような気さえします。
いや、きっとそうだと思いたい。
若い職人には絶対に真似できない、長い歴史を経てこその味なんだなぁ、と。

もちろん若い時にしか出せない味だってあります。
でも、今は老舗の味を楽しませて欲しい気持ちが揺るがないのです。

また来年を楽しみにしています。

Date: 12/02/04