2336|18周年
今月のアタマに18周年を迎えました。
思い通りに行かないという点では独立してからベスト3に入る印象深い一年でした。息子が産まれて父親の役割が増えたこと、あと丁内会長の当番が初めて回ってきて地味に体力を奪われていること、一体ひとり何役やればいいのかとさすがにキャパオーバー。倒れては元も子もないから、仕事に使うエネルギーも少し抑えて一年やってみようと試したのはファインプレイだったかも知れない。どうか次の一年は少しラクになりますように。
3年くらい前に「15年も続けてたらもう安泰ですね」と言われたことがある。たしか20代の子の相談を受けていた時。そう思い込んでしまう気持ちはよく分かる。どこかのタイミングで「自動運転モード」に入れるのだと。でも現実は決してそんなことはなくて、毎日毎月毎年ずっと試行錯誤を繰り返してきた結果に過ぎない。
100年続いている料理屋さんが絶対に美味しいとは限らないのは、みんな知っていること。経営が上手なことと、美味しいことは決して比例しない。でもその選択はもちろん自由。味は落とさないように、そのために経営が上手くなり過ぎないように。自分はこの辺りのバランスをずっと保ち続けるんだと思う。持ち味が何なのかを履き違えずに強くしていく。個人事業の肩身が狭くなる世の中だけど、逆に今おもしろいのは小さなお店だから。
関わってくださる全ての方へ、いつもありがとうございます。19年目もどうぞよろしくお願いします。
Date: 23/10/02 Photo: SIGMA fp + Leica Lens
2335|一才
このあいだ息子が一才になりました。
まだたった一年だけど、よくぞ息絶えずに生き延びてくれたという安堵の気持ちでいっぱいです。自分たちもいろんな人に助けてもらいながらも不慣れな毎日をよく頑張りました。これをあと19セット繰り返したら成人か、なんて想像しても未来すぎてうすぼんやりともイメージできやしない。まだまだ先は長い、だけど本当によくやったぞ我が家。そして今ちょっとだけ気が抜けてます。節目はどうしても気が抜けてしまうみたい。それだけ気を張って暮らしてきた証拠。
息子のいる生活は最高だ。
ただ、それと引き換えに持ち前のフットワークがすっかり影を潜めてしまった。単純に自由に動き回れないストレスとは別に、いろんな人と巡り会う数が激減したのが個人的にいちばん歯痒い。このもどかしさとは、この先ずっと付き合っていくことになるんだろう。ぐずぐず過去を引きずっても仕方ないし、これまでとは違う方法を、今できるベストをあれこれ模索しているところ。会いたい人に会いたい、どうしてもそこだけは譲れない。
9月が始まった。
まだまだ暑い日が続くのに、条件反射のように「ひやおろしの季節が来た」と気持ちが浮き立つ。そのぶん反比例してビールの摂取量は減る。すっかりそんなカラダになってしまっている。季節だったり気分だったり、状況に合わせて美味しいお酒を選べるのは本当に楽しい。「適切なものを選ぶ」行為それ自体が楽しいのかも知れない。
Date: 23/09/02 Photo: SIGMA fp + Leica Lens
2334|牧野富太郎植物園
息子が生まれる3ヶ月ほど前、夫婦で旅した四国の2日目に足を運んだ牧野富太郎植物園の記憶。もう一年以上前のことだけど、すこぶる印象的な時間だったことはよく覚えてる。
牧野富太郎と言えば現在放送中の朝ドラ「らんまん」のモデルとして有名ですが、当時の自分は全く知りませんでした。だったらどうして、というのは偶然でも何でもなく妻が牧野富太郎の大ファンだったから。そう言えば、ここに行くために四国を選んだんだった。
広大な敷地に、見たことのない植物がびっしり。びっしりだけど、一種類一種類がきっちりと管理されていて、全体としても個としても、どちらの視点でも楽しめる。特に植物の知識がない人でも何かしら感じ取れる仕掛けになっていて、とても好感の持てる場所でした。建築的にも見応えあり。いつかまた行きたい。
Date: 23/08/05 Photo: SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
2333|君たちはどう生きるか
コロナ禍にふと「自分の歌が歌いたい」と口走ったことがある。自分でもビックリしたんだけど、口走ってしまったんだから、きっと本心に違いあるまい。
どこかの誰かが作った曲じゃない、ただ自分が自分のためだけに作った歌を。ミュージシャンでもなければカラオケすら好きじゃない自分がそんなことを考えるに至ったのは「自分はこの世界に何か残したいのか」と思い始めたことにある。
別に歌でなくても良かったのかも知れない。絵でもいいし、言葉でも料理でも何でも。とにかくただ「自分のために自分を100%表現することってこの先あるんだろうか」をずっと考え続けるようになった。少し前に映画化もされた大好きなJAZZマンガ「BLUEGIANT」の言葉を借りるなら「内蔵がひっくり返るくらい自分を曝け出す」ような。
この間「君たちはどう生きるか」を観た(※ネタバレはありません)。残念ながら自分好みではなかった。好みではなかったけれど、あの作品に宮崎駿の内臓を見た。
宮崎駿に限らず、誰かのハッキリとした姿勢や考え方には強い共感と反発が生まれやすい。世間の評価を見ても、この作品はハッキリと意見が分かれている様子。実際、自分の(かなり気が合う)友達の中には面白かったという人も少なくない。意見が分かれるのは自然で望むところ。生まれ持った性格なのか職業柄なのか、自分はどちらかと言うと個性を消すことにこだわっているところがあるので、ハッキリ意見が分かれるほど表現できた何かには、強く憧れてしまう。他者から見たら自分にもそんな要素があるのかも知れないけれど、とにかく羨ましかった。
Date: 23/07/27 Photo: SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
2332|WEEK神山
徳島県神山町にある宿泊施設「WEEK神山」のWebサイトリニューアルを担当しました。
従来の旅館やビジネスホテル、あるいはオーベルジュでもないユニークな宿です。次世代の新しい田舎として先進的な取り組みを数々行っている神山町のハブ的な役割を担い、神山の魅力を伝えようと積極的にインターンを受け入れたり、地域の生活者に向けた食のイベントなども定期的に行っています。
そういった動的な要素から、宿という形態をとっているものの、地域の活動拠点に宿が付随している、という見方もできます。宿だけれど宿だけに終わらない、だけれども宿である。遠方からの宿泊予定者のための視点、地域のための活動拠点としての視点。そのバランスをどう着地させるかに最も心血を注いだプロジェクトです。
WEEK神山との出会いは2018年のちょうど今頃、2泊3日で四国をひとり旅していた時のこと。その日の宿さえ決めない自由気ままな旅の途中、旅好きな友達に「徳島でどこか面白い場所ないー?」と連絡して教えてくれたのがきっかけ。でも、あいにく旅の期間中は休館日。どうしても気になったから急遽3泊に変更してまで泊まりに行った記憶があります。今さらながら直感に逆らわないで本当に良かった。
・・・というようなことも伝えたかも知れないけれど、その日は宿泊者が自分だけだったか、オーナーの神先くんと夜ゆっくり話す時間があり、その日のうちに意気投合して今の関係に至ります(その間も何度か会いながら)。いかにも自分らしい出会いですが、こういう出会い方のほうがむしろ自然で、無理がないからこそ長続きしている気がします。
打ち合わせも兼ねるともう4〜5回は神山に通っています。一人で、夫婦で、そしてこの間は家族で。関わりはこれからも続くので(勝手にチームだと思っています)、またひとつこれからの楽しみが増えました。神山はホントいいところ。自信を持っておすすめします。
Date: 23/07/07 Photo: SIGMA sd Quattro + SIGMA 18-35mm F1.8 DC HSM | Art
2331|あつカエル
「マスク外したら思てたんと違った」。コロナ禍で、きっとほとんどの人が経験した現象のひとつ。
今度こそは、この人こそは、とやってみるも、ちっとも当たらない。マスクの中身を具体的にイメージするわけでもないけど、自分の想像を見事に裏切ってくる。まさに“的外れ”というか。自分の思い込みって大したことないというか、ほぼ外れているんだなぁとつくづく思い知れて、ここだけ切り取るとコロナ禍もなかなか有意義な時間でしたよね。もし叶うならマスクをつけた知らない人を100名ズラッと集めて、その確率を調べてみたい。たぶん最低でも9割はハズれると思うから。
もうちょっと踏み込んで、マスクしていなかったらいなかったで、今度は「内面はこんな人だろう」と誰もが無意識に想像する。たぶんこれも、けっこうな確率でハズれてるんですよね。情報が増えた分もうちょっと確率は変わるとしても、思い込みがハズれない状況ってたぶん存在しないんじゃないかなあ。それが思い込みだから。
ただ、思い込みは視点を変えれば嬉しい発想というか産物で、これがあるから前に進めることだってたくさんある。だから思い込みはアカンで、と言いたいわけじゃなくて「自分の思い込みは基本的に外れてる」これを分かった上で扱えるのがいいですよね。状況に応じて思い込みをなくすとか、それでしなやかに事が運ぶことって少なくないし。
Date: 23/06/29 Photo: SIGMA dp3 Quattro
2330|10ヶ月
あっという間に息子も生後10ヶ月(毎日が目まぐるし過ぎて自分の時間軸ではもう3年は経ちました)。
この頃は「ハイハイ」の免許を取得したようで、目の前にある世界をひとつひとつ手当たり次第に確かめている様子。父親らしい立ち振る舞いもまだよく分からないので、45歳ほど離れた弟ができたつもりで接しています。マイペースすぎて呆れることもあるけれど、まだまだかわいいです。かわいい is 正義。
それにしても育児ってエネルギーがいる。生まれる前に「パパだって体力いるからねっ!」とアドバイスしてくれた友達の言葉が今ようやく身に染みている、というよりまとわりついている。40代半ばからの育児は想像していた以上にハード。
それだけに音を上げそうになる日も時々あるけれど、自分の事業を休んで育児に専念してくれている妻の方がよっぽど大変だし、心の中で「アル・パチーノに比べたらまだマシだから」を唱えて乗り切るのです。子育てしながら働いている人は本当にすごいですね。尊敬しかない。体力づくりと息抜きのバリエーション、そのへんが課題。
デザインの仕事は、7月公開予定のWebサイトリニューアル案件が佳境に入っています。何でも「直前」って、いろいろ出てくるじゃないですか。前日にどれだけ下準備していても、出かける前に忘れ物に気が付いたり、あるいは本当にこれでいいのか、なんて迷いが生まれたり。
そんなことをひとつひとつ冷静に対処できるかどうかで品質は大きく変わるし、ともすれば積み上げてきたものが台無しにもなりかねないので、ゴールまで走りながらも集中は切らせない苦しい期間。ハイペースすぎて息切れしそうにもなるけれど、楽しい時間でもあります。楽しい is 正義。
Date: 23/06/17 Photo: SIGMA fp + Leica Lens
2329|坂本龍一
坂本龍一が亡くなった。
12月に配信された『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022』。教授本人も語っていたように本当にこれが最後になってしまった。鬼気迫る迫力とその対極にある穏やかさの両立。スクリーン越しなのに、まるで目の前にいるかのように伝わってくる感動。「最後」という言葉の説得力がそこにありました。
20代から四半世紀ずっと聴き続けた教授の音楽。きっと生き方にもずいぶん影響を受けました。早すぎた教授の死に未だ喪失感を隠せません。音楽以上にその声がもう聴けないことが最大の悲しみです。ご冥福をお祈り致します。
Date: 23/04/03 Photo: SIGMA fp + Leica Lens
2328|大寒波
今回の雪は人生で一番といっても過言ではないほど降り積もり(自宅周辺では約40センチ)、さすがに当日は家から出ることも難しくて働くことを諦めました。仕事場に行けたら行けたで寒いものは寒いし、どうしたって気持ちも浮き立ってしまうので、大して集中できるはずもない。リモートワークに切り替えたところでそう大差ないです。結局こんな時は思い切って休むのが一番いい、それが令和(たぶん)。
そもそもの寒さに加えて連日の雪かきと路面凍結した中での車の運転、さらには自宅の水道管が破裂するトラブルにも見舞われて、なんだかいろいろ気ぜわしい数日間でした。ようやく一息つけた今、張り詰めていた緊張が一気に解けてなかなかのポンコツ具合です。こんなときはポンコツを認めて、そしてがんばった自分を讃えて無理しないに限ります。きっと皆さんもそれぞれお疲れだと思うので、どうか一息つけますように。
雪の表情って毎回違ってホント楽しいですよね。広角より中望遠とかマクロレンズで撮る方が夢中になれて好みです。
これはハッピーどぶろくが世に出てからずっと撮ってみたかった一枚。
Date: 23/01/28 Photo: SIGMA dp3 Quattro
2327|神山
宿泊施設のWebサイトリニューアル案件で徳島県・神山へ。ここ数年は県内からの依頼が集中する中、時々こうして遠出できるのは旅好きとしてありがたいことこの上ない。しかも元々はただの宿泊者として訪れた場所で、今度はデザイナーとして再訪できることも。きっかけはどうあれ、距離の程度がどうであれ、普段の生活から定期的に離れることは誰にとっても必要不可欠な時間。息子が産まれてからは、仕事とはいえ遠出ができるのも当たり前ではないし、ますます自分のできるベストを尽くそうと思えてくる。
打ち合わせの帰り、いくつか素敵なお店に案内してもらった(写真のお店はしびれるほどカッコ良かった)。自分自身そんなに情報の感度は高くないのに、周りの人が本当にいいものをいろいろ教えてくれたり勧めてくれたりする。この間も地元の雑貨店の限定イベントを東京の友人が教えてくれた。せっかく教えてもらったし、と足を運んだらいい出会いがあった。そんなことの繰り返しで自分ができている。そういえばこの宿泊施設を教えてくれたのも友達だった。
Date: 23/01/18 Photo: SIGMA fp + Leica Lens
2326|新年おめでとうございます
年始は18きっぷで旅に出ているのがここ10年以上の習慣になっていましたが父親になるとそうもいかず、主に自宅でゆっくり過ごしました。旅にばかり出ていたものだから長い休みを家でどう過ごしていいやら分からなくて、マンガを買いこんだりWiiを借りて久々にテレビゲームをしたり、慣れない休みをゆるゆるしていました。
生まれて4ヶ月を過ぎた息子は順調に育ってくれています。まぁなんというか、かわいいです。自分もちゃんと親バカになれて安心しました。それにしても、生まれてから主にやってることが「寝る」って不思議ですよねえ。新入社員が初日から寝てたら怒られますよ。お腹の中に何ヶ月もいたのだから、出てきたら「ハイどうも〜」てな具合に元気よく登場するだけの時間はあったはずなのに。でもまあ、人間って元々こんなペースなんだぜって言われてもいるようで、大人になってもそんなに飛ばす必要なんてもないんだと思います。ゆっくりやろうぜ、というか、そもそものペースでやろうぜ。
ひとりの生活者として、デザイナーという職業人として、お寺を使って活動する人として、そして父親として。今年はこの役割のバランスを取りつつ、どの領域でも自分らしく楽しくあり続けるのが目標です。
本年もどうぞよろしくお願いします。
Date: 23/01/07 Photo: SIGMA fp + Leica Lens