1452|言の葉の庭(ことのはのにわ)

新海誠監督の劇場版アニメ「言の葉の庭」観ました。エンディングテーマが大江千里の「Rain」をカバーした基博だったから、ではなく映像の美しさに惹かれて。

映画としては短い46分(その代わり1,000円)。ストーリーは男子高校生と教師が主役のオーソドックスな純愛物語。だけど映像表現と効果音表現がものすごく新鮮。この「表現」部分を際立たせるために、あえて脚本をシンプルに抑えたのかと思えるほど。

中でも印象的だったのが「透明なもの」の表現。半分以上のシーンが雨というこの作品では、いろんな表情の雨を描き分けています。大雨、小雨、豪雨、水たまり、雨上がりの水滴、など。雨と対極にある「光」の表現もまた見事で、その相乗効果にウットリ。一番のツボは「ビニール傘」。ビニールの表現だけでご飯何杯でも食べられるほど。他のアニメにはない、実写より透明感を感じられる表現。

その表現力に効果音が加わって、気持ちよく世界観に入り込みます。例えば雨の音、風の音、野菜を切る音、ぬかるみを歩く音。本来は主役になることのない「引き立て役」が、意味を持つかのように耳に入ってくる。だからと言って過剰に主張するでもなく、まるでオーケストラの一員のような役割を担っているかのよう。それさえもひとつのセリフであるかのような存在感。一般的にはストーリーから世界に入り込むものですが、でもこの作品は珍しくそんな所が引き金になりました。

シンプルな脚本。いわゆる「ベタ」。でもそれは僕の好きな種類のベタ。だからこそ安心して観ていられるし、強く訴えるものがある。安心しきったところに基博がおいしい所をさらっていきます。それはもうズルいくらいに。いい作品です。

Date: 13/06/12