これでこそ

田中一光デザインの世界(DT)

昨日と同じ写真ですが決してズボラしているわけでなく、今日は写真の中のパネルについて触れます。

見て下さい。完成後に「矢印」が上から貼られています。言うまでもなくこれは美術館の場所を知らせるための矢印。サインとしての機能が足りなかったと推測できます。使ってみて初めて気付くことがある。よくあることです。新しくオープンした商業施設のW.C.などでよく見ました。カッコいいけどそれがトイレのサインと認識できなかったり、どっちが男性でどっちが女性かすら分からなかったり。

作り手の目線で見ると、パネルのデザインとは明らかにトーンの異なる矢印を貼られ「見た目」の品質は落ちています。もし僕がこのパネルのデザイナーなら「あ〜あ、デザイン台無しにして・・・」なんて落胆したかも知れません、20代の頃なら。今はそうは思いません。

最近は「これでこそ完成形なのかも」と思いつつあります。伝わってこそなんぼ。異質なトーンが組み合わさって、かえってお互いが良い方向に作用しているとさえ感じます。もう少しトーンを近づけて品質を上げた方が良いとは思いますが、その先に新しい落とし所があるんじゃないかと、いま模索しているテーマのひとつです。

Date: 13/03/14